火鍋

火鍋は中国人の食文化において
広く知られる鍋料理
中国大陸だけに限らず、
香港、マカオ、台湾、シンガポール、
マレーシアなどの華僑の社会でも食され、
最近では日本をはじめ世界の中華街や、
火鍋専門の中華料理店で提供されるようになった。

火鍋は中国では長い歴史を持ち、
各地でさまざまに発展した独特の料理です。
古くは「古董(グウトン)羹」とも
呼ばれていました。

煮たったスープに食材を入れたときの
ゴトゴト」という音から
名づけられたのでしょう。
音から受けた印象が料理名になった
と言われています。

鍋に食材を入れて煮る食べ方から
中国のしゃぶしゃぶ」と
呼ばれることもあるようですが。
北京のシュワンヤンロウという
羊肉の火鍋が京都に伝わったのが
日本のしゃぶしゃぶのルーツのようです。

各地の火鍋

中国の火鍋は豊富な種類があります。
有名なものでは、広東の海鮮火鍋、
さっぱりして奥深い味わいがあります。

蘇杭一帯には菊花火鍋、
さわやかな香りで独特の風味があります。
雲南の填味火鍋は、
辛味が豊かな風味を醸し出しています。

湘西の狗肉火鍋は
「狗肉をしゃぶしゃぶしたら、
神様も隠れていられない」
と言われるほどです。

重慶の毛肚火鍋は、
辛味とふくよかな香りが特徴です。
そして北京には羊肉の火鍋。
一度食べたら病みつきになるでしょう。

この他、杭州の三鮮火鍋、
湖北の野味火鍋、東北の白肉火鍋、
香港の牛肉火鍋、上海の什錦火鍋なども
独特な風味で美食家に好まれています。

火鍋の歴史

火鍋が何時ごろできたのか、
はっきりしたことは分かっていません。
ただ中国の食文化の歴史を見ると、
おおよそ3千年くらい前に発明された
「鼎」という食器と
関係があると考えられます。
これは鉄製の大鍋で
3本か4本の足で支えられています。

当時は祭祀において、
牛や羊の肉をその中で煮て
神にささげた後、
皆で分け合って食べたのでしょう。
これが火鍋の最も古い形といえます。

火鍋の食文化

火鍋は美味しいだけでなく、
食文化にも深く関わっています。
東北地方では鍋に入れる
食材の並べ方にも決まりがあります。
「前飛後走、左魚右蝦、四周軽撒菜花」といわれ、
なべの手前には禽鳥類、
後ろには動物の肉類、
左に魚、右にエビなどを並べ
野菜を散らすという形です。

招かざる客が来たときは、
手前に特大の肉団子を入れ、
後ろに肉類を入れます。
これは早く帰れという意味なのです。

火鍋の栄養

火鍋は肉、魚、野菜、香辛料など
豊富な食材を使うので、
様々な栄養素が一度に摂れる
理想的な料理といえます。

その土地の風土に合った
食材を使うことで健康維持にも
役立ってきたのです。

日本でも七草粥がありますが、
台湾では正月7日に火鍋を作ります。
材料は肉、魚、ニラ、香菜、
ネギ、ニンニク、セロリを使い、
どれ一つでも欠けてはいけません。

それぞれの食材に富や健康、長寿などの
意味が込めて、バランスよく栄養分を
摂取しようという
古人の知恵なのでしょう。

火鍋の発展

鍋自体の発展と共に、
味付けも工夫されてきました。
三国時代、魏の文帝のとき
「王熟釜」という記録が残っています。

これは鍋の中を5つに分け、
それぞれに別の味(五味)の食材を入れたものです。
現在のオシドリ鍋(鍋を2つに仕切り、
赤く辛い麻辣湯と白くあっさりとした白湯を入れた火鍋)の
基になったと思われます。

火鍋が最も盛んだったのは清の時代です。
『清代档案史料叢編』に
「千叟宴」の記録が記載されています。

これは1796年に宮中で催された宴で、
用意された火鍋は1550以上、
集まった人は5000人以上という
前例のない大規模な「火鍋宴」でした。

前の記事


次の記事

SPONSORED LINK
合わせて読みたい!中国料理の代表例・ルーツの関連記事
  • category
    中国料理の代表例・ルーツ

    日本でお粥と言うと、風邪をひいたときや体調が悪い時などに食べるイメージが強いが、中国の多くの家庭では毎日のように食べているポピュラーな食べ物の1つです。中華料理の朝食の定番メニューの1つと言っても間違えないでしょう。

  • category
    中国料理の代表例・ルーツ

    ふかひれは大型のサメのひれを乾燥させた中華料理の食材である。 中国でフカヒレが食べられだしたのは明の時代と言われている。潮州料理など中華料理の高級食材として利用される。